アトピー性皮膚炎とは、いくつもの要因が重なって影響する「多因子性」の病気で、かゆみのある湿疹が、慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返します。
アトピー性皮膚炎の治療は、主に外用薬と内服薬を用いて行われます。
外用薬としては、ステロイド外用薬や保湿剤などを用います。
内服薬としては、抗ヒスタミン薬や免疫抑制薬などを用いる場合があります。
アトピー性皮膚炎は、完全に治すことは難しい病気ですが、適切な治療と生活習慣の改善により、症状をコントロールすることは可能です。
アトピー性皮膚炎の症状と特徴
- 赤みがある
- じゅくじゅくして水分が多い
- 長引くと皮膚が硬くなって盛り上がったり、ごわごわした状態になる
- 左右対称にできることが多い
- 年齢によって湿疹の出やすい部位・傾向が変化する
乳児期~幼児期
頭や顔に多く湿疹が発生し、幼児期にかけてだんだんと身体や下肢に広がり始めます。
特に肘・膝などの関節部分にできやすく、皮膚の乾燥が目立つようになります。
思春期~青年期
顔や胸、背中、肘など上半身に湿疹ができやすくなります。
アトピー性皮膚炎は、遺伝的な要因と環境的な要因が複合的に影響して発症すると考えられています。
頭や顔に多く湿疹が発生し、幼児期にかけてだんだんと身体や下肢に広がり始めます。
特に肘・膝などの関節部分にできやすく、皮膚の乾燥が目立つようになります。
遺伝的な要因
遺伝的な要因としては、アトピー素因と呼ばれる、アレルギー反応を起こしやすい体質が関係しています。
ご家族にアトピー性皮膚炎や喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどの人がいると、体質を受け継いでアレルギーを起こしやすくなる場合があります。
環境的な要因
環境的な要因としては、ダニやハウスダスト、花粉、動物の毛やフケなどのアレルゲンのほか、汗や衣類による摩擦、乾燥、ひっかき傷、洗剤などの日用品、化粧品などの刺激や、寝不足、過労、ストレスなどが関与しています。
アトピー性皮膚炎の治療は、①スキンケア ②薬物療法 ③悪化要因の対策の3つが基本となります。
完治できる治療法はないため、症状がない、もしくはあっても軽微で日常生活に支障がない状態を維持することが目標になります。
正しい治療を行うことで症状をコントロールして、湿疹などの症状が出ない状態にすることができます。
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スキンケア
アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚の乾燥がしやすいため、こまめに保湿をすることが大切です。
保湿剤は、入浴後すぐや就寝前に、たっぷりと塗るようにしましょう。
保湿剤を選ぶ際は、自分の肌に合ったものを選ぶことが大切です。
また、入浴時も、ゴシゴシ洗ったり、こすったりしないように注意しましょう。ぬるま湯で優しく洗い、その後、保湿剤を塗るようにしましょう。
保湿剤には、以下のようなものがあります。
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薬物療法
アトピー性皮膚炎の薬物療法には、外用薬と内服薬があります。
外用薬には、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、カルシニューリン阻害薬外用薬などがあります。
ステロイド外用薬は、炎症を抑える効果が強く、アトピー性皮膚炎の治療に最もよく用いられる薬です。ただし、長期連用すると副作用が出ることがあるため、注意が必要です。
タクロリムス外用薬やカルシニューリン阻害薬外用薬は、ステロイド外用薬の副作用が少ないことが特徴です。
内服薬には、かゆみを抑える効果の抗ヒスタミン薬と免疫の過剰な反応を抑える効果のある免疫抑制薬などがあります。
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悪化要因の対策
アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる原因である、アレルゲンやそれ以外の日常生活における刺激、ストレスなど、前述した環境的な要因をできるだけ避けることが、症状のコントロールにつながります。
ダニやハウスダストなどのアレルゲンを避けるために、掃除をこまめに行う、寝具を清潔に保つ、エアコンや加湿器を活用するなどの対策を行いましょう。
乾燥した環境を避けるために、加湿器を活用したり、室内を暖かく保ったりするなどの対策を行いましょう。
ストレスを溜めないようにするために、十分な睡眠をとったり、リラックスできる時間を作ったりするなどの対策を行いましょう。
アトピー性皮膚炎の治療は、症状の程度や患者さんの年齢などによって、治療法が異なります。
そのため、医師と相談しながら、自分に合った治療法を選択することが大切です。
アトピー性皮膚炎の治療に処方される薬には様々ありますが、
その中で新しい画期的な2つの治療薬をご紹介します。
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痒みを抑えるミチーガ
ミチーガは、2022年8月8日に発売された、アトピー性皮膚炎の治療薬で4週に1回のペースで注射をするお薬です。
アトピー性皮膚炎の最も辛い症状は痒みであり、その痒みをターゲットにした薬剤がミチーガです。痒みを抑え、掻き破ることでさらに痒みが増強するという悪循環(itch scratch cycle)を断ち切ることでアトピー性皮膚炎の症状を軽減させます。
アトピー性皮膚炎の痒みの原因物質としてIL-31が中心的な役割を果たすと考えられています。
ミチーガはIL-31の受容体拮抗薬です。また痒みの軽減に伴い皮膚症状の改善も期待できます。
ミチーガは、13歳以上のアトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)を適応症としています。
ミチーガの用法・用量は、1回60mgを2週間に1回、皮下注射します。
ミチーガの副作用としては、以下のようなものが挙げられます。
- 注射部位の疼痛、腫脹、発赤、硬結
- 頭痛、疲労、関節痛、筋肉痛、上気道感染、消化不良
- アレルギー反応(アナフィラキシーを含む)
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生後6ヶ月以上から使える
デュピクセント
デュピクセントは、2017年に米国で承認され、2018年に日本でも承認された、アトピー性皮膚炎の治療薬で1回300mgを2週間に1回、皮下注射します。
デュピクセントはIL-4/IL-13の働きを阻害することで、Th2細胞の活性化や表皮細胞の炎症を抑制し、アトピー性皮膚炎の症状を改善します。
既存の治療薬で十分な効果が得られなかった中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者さんに対して、高い治療効果が期待できる薬剤です。
これまで15歳以上に限られていましたが、生後6歳以上の小児から使えるようになりました。
デュピクセントの副作用としては、以下のようなものが挙げられます。
- 注射部位の疼痛、腫脹、発赤、硬結
- 上気道感染、鼻炎、咽頭炎
- 頭痛、疲労、関節痛、筋肉痛
- 鼻出血、結膜炎
- 悪心、嘔吐、下痢
- アレルギー反応(アナフィラキシーを含む)